高校卒業式が挙行されました。
TOHO Today行事高校
去る3月1日(土)に高校卒業式が行われ、79期307名が桐朋高校を卒業しました。
式には多くの保護者の方々のご臨席を賜りました。
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式後、担任とともに最後のホームルームを行い、解散となりました。式後もしばらくの間、多くの卒業生が校内に残り、教員や級友達と談笑する姿が数多く見られました。
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卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
以下に、卒業生代表として登壇した石原佑高(いしはら ゆうこう)くんの答辞を掲載します。
答辞
「つまらない時乾いた日に誰かが知らない色を足す 十人十色の感性から合わせ紡ぎ築き上げて さあ俗世を見下ろしてモノクロの現実はもう向こう(無効)」
これは、七十九期が中心となって創りあげた第72回桐朋祭のテーマソング『nビットフルカラー』の歌詞の一部です。久しぶりに国立駅から学校までの道を歩くと、そこに見えるのはキャンバスに上書きされた色、思い出の片鱗ばかりで、もうここに新たな色が足されることはないと思うと、少し前まで確かに自分のものであった景色が、今ではどこか遠いもののように感じられました。
先週まで厳しかった寒さも少し和らぎ、校門をくぐってすぐの所で我々の門出を祝すかのように咲いた枝垂れ梅の花がかすかに春の訪れを予感させるこの佳き日、我々に多くの知的探究の場を提供し続けてくださった先生方、常に我々のことを見守り続けてくださった保護者の皆様、音楽部や先程送辞を述べてくれた永村君を始めとする高校総務委員の皆さんなど多くの方のご列席を賜り、この式を挙行できますことを、三〇七名の卒業生を代表し心より御礼申し上げます。
冒頭述べたように、七十九期は「色」、多くの色の重なりと、その変化に富んだ学年でした。あらゆる「個」が存在し得て、互いにその「個」を高め合うことのできる学年、七十九期。しかし、七十九期は初めからそうだったでしょうか。そう、七十九期の原点は色の重なりでも何でもなく、担任陣の一人のある教師が発した「怒号」にありました。六年前の桐朋中学の合格者説明会、ホールに響き渡った轟音は今でも多くの卒業生の記憶に鮮明に残っていることでしょう。
七十九期の原点には間違いなく、先生方のこうした「熱」がありました。「自由」が代名詞と言われているこの学校において、当初の学年の印象は他から聞く限り「圧」そのものであったそうです。
ところが、我々はこの「圧」によって萎縮したというより、むしろそうした先生方の熱を巻き込み様々な方面で「個」を発揮していきました。先生方との間に起きた珍事などをネタに漫才を披露したグループ『モンゴリアン旧人』などユニークな人材が活躍した学年集会、判定をめぐり毎回泣く人が現れるほどの異常な盛り上がりを見せたスポーツ大会・運動会といった行事のほか、毎度質問が時間内に終わらない講演会、新しい数学の定理の発見する仲間の出現など、七十九期の知的好奇心の高さが伺える場面が多くありました。また、陸上・野球を中心にスポーツ強豪校も顔負けの実績を残した人も現れた部活動など、七十九期生の「個の活躍」について例を挙げればきりがありません。このように、七十九期は先生方の「圧」改め「情熱」と融合しながら、一人ひとりの「個」を光らせていたように思います。
あわせて、七十九期にはもう一つ「集団」としての強みがありました。独自の活動に加え大会や行事などでも写真撮影を行い七十九期にとってかけがえのない一瞬一瞬を収めてくれた写真部(同好会設立2021年、2023年に部へ昇格)や、この学年においておそらく最大の異質さを誇ったであろう「オカルト研究会」の新設(2022年)に見られるように、「個」が各方面で異彩を放つ一方で「集団」としても互いの色を失わせることなく、各々を調和させて一つのものを創りあげる力があったように思います。そして、その力が最も顕著に表れたのが桐朋祭でしょう。飲食団体の復活を中心に、コロナ禍を乗り越えそれ以上の進化を目指し奔走した実行委員会を始め、多くの部・団体が創意工夫を凝らしてこのイベントを創りあげました。
「水彩絵の具を混ぜるように 色画用紙にちりばめるように 次は何を塗るかと筆がパレットで踊る」(第72回桐朋祭テーマソング『nビットフルカラー』より)
桐朋祭の準備にあたる期間中、放課後の学び舎のあらゆる所に、このテーマソングの歌詞そのものの光景が繰り広げられていました。
我々七十九期はこの三年間あるいは六年間を通して、なにより自身の「個」、色を何にも縛られずに表現する力、そして各々の色を認め合い、その色を調和させる力を培ったと言えるでしょう。
翻って、我々が飛び立とうとする社会には何が待ち受けているのでしょうか。情報化社会の進展によって時間的・空間的に隔絶した他者との結びつきが持てるようになった一方で、多くの人が所得、学歴といった指標によって相対化され押し付けられた価値によって、アイデンティティを見失いがちになり、また、そうした断片的な情報で他者を判断する・・・そうした風潮が強まっているように感じます。であればこそ、揺るぎない自身の「個」を確立し、他者の「個」との調和を図ることを学んだ我々は、そうした社会の風潮に抗い、また変化を生み出す力を持っているのではないでしょうか。
それは時に、反発をうけることもあるのかもしれません。英語の授業中、我々はしばし「お前さん達は常識を知らないのか。」と呆れられたものでした。しかし皆さん、高1英語総合の授業で習った『Reversing Assumption』を思い出してみてください。何か変化を生み出そうとする、或いは何かを新しく創り出そうとする時、それには非常識を伴うこともあり、また時に失敗をすることもあるのかもしれません。それでも何度でも何度でも間違えながら、自身の信ずる方角へとまっすぐに飛べばいい。だって、「どんな軌道(みち)もそれが君の色だから。」
雛の家を巣立ち、鳳として我々が飛び立つそれぞれの空が光輝に満ちたものであることを信じて進みましょう。そして、また数年後、満開の桜で彩られたこの国立の街で会いましょう。
2025年3月1日 七十九期卒業生代表
桐朋中学・高等学校生徒会 前高校総務委員長
石原 佑高