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大学で研究してみませんか 電気通信大学情報理工学研究科機械知能システム学 横井浩史先生による特別講義

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進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。今回は特別版の形で、朝日新聞社の主催で、中学・高校生が大学での学びに触れる「プロフェッサー・ビジット」(駿台予備学校・代々木ゼミナール協賛)が、11月20日(火)に本校多目的ラウンジで行われました。参加したのは、中1生4名、中2生3名、中3生1名、高1生8名、高2生3名の合計19名です。

講義をしていただいたのは、電気通信大学大学院情報理工学研究科教授(機械知能システム学専攻)の横井浩史先生で、テーマは「サイボーグ技術と福祉医用機械」です。

まず、横井先生の研究についてのご説明で、「サイボーグ技術とは、人間の身体に付いて、人間の身体の機能を拡張するものである。その役割の一つが『機能代替』で、具体的には、先天的に、あるいは、事故などで失った手・指の機能を補う物、例としては、義手などにあたる。機能代替の研究は、自分の身体に取り付けた機能を脳がどのようにして活用するのかも対象にしている。もう一つが『運動援助』で、手や指を失ってはいないが、麻痺が生じた場合の対応にあたる。このケースで考慮すべき点として、見た目がある。そのため、神経の麻痺を治して筋肉が動かせるようにする、機能回復としてのリハビリが重要となり、神経に電気信号を与え、トレーニングを積むことで麻痺を治す、神経科学による取り組みも行われている」というお話を、映像とともにご紹介いただきました。

さらに、「博士論文では、アメーバロボット、今流行の柔らかいロボットを研究した。普通のロボットとは異なる、柔らかい骨組みで作られた物を作った。当時、ロボットには精密さが求められ、柔らかいロボット、変形するロボットなどは、役に立たないと考えられていた。今取り組んでいる義手も、日本で使う人は8万人ほど。人口が1億3千万人であることを考えると、必ずしもメインとなる研究ではない。自分は『役に立たないもの』に関する研究が好きで、役に立たないものを役に立つようにすると、大きな利益を生むとも考えている」と、先生の考え方の根本を教えていただき、生徒は大いに刺激を受けました。

続いて、筋肉が動く仕組みを筋電位を元に説明いただき、筋電義手のデモンストレーションをしてくださいました。ニューラル・ネットワークによるディープラーニングを通してAIに、どの筋肉を動かすと、どの指が動くのかを学習させ、それを元に筋電義手を動かすという、現在の技術の進歩を目の当たりにしました。

筋電センサーの仕組み、筋電信号を用いた、人の運動意図の測定方法についてのご説明の後、幼児用の筋電義手のデモンストレーションとして、参加した生徒一人一人が、筋電義手の使い方を体験しました。

ものを握った際の、手の筋肉の加速度と年齢との関係を示したグラフをもとに、「6歳以上になると、加速度が下がる理由として、その年齢になると、自分の手をコントロールできるようになる、実際、4、5歳の頃は、食事でスプーンも上手に動かせず、こぼしてしまう」といった例が話題となり、「人間は6歳頃に、手・指などの運動を習得する。つまり、筋電義手を6歳頃までに与えれば、自分の手のように扱える。さらに、小さい頃からロボット技術、サイボーグ技術を扱う経験を積めば、人間は自分の力以上の力を扱えるようになる」として、ヨーロッパで行われている取り組みのご紹介もあり、実に刺激に富んだお話を教えていただきました。

話題は広がり、脳に関する研究として、筋電義手を動かしている時の脳の働きを調べ、筋電義手がうまく使えていると頭をあまり使わないが、うまく使えないと頭をたくさん使っていることや、脳の麻痺を、電気刺激を通したトレーニングで治すことができることを、実際の映像を通してご紹介いただきました。

最後に、電気通信大学の提唱する総合コミュニケーション科学について、さらに、大学と高校の違い、具体的には「高校では生徒と呼ばれ、教えてもらう存在なのに対して、大学では学生と呼ばれ、学びながら生きる存在である」ということや、「大学に行くべき人は学ぶことが好きな人・新しいことを知りたい人・人と繋がりたい人である」という先生のお考えもご紹介いただきました。

1時間半を越える講義が終わったあとも、生徒からの質問に丁寧にご対応いただきました。

参加した生徒の感想です。

・医学部への進学を考えていること、最先端の技術にも興味があること、祖母や父が高齢で手足が不自由になっているので、今回の話題は他人事ではないと思い、参加しました。先生がなさっている研究だけでなく、それに関する話もたくさん聞けたので、先生のお話が、自分のこれまでの知識と結びつき、しっかりと理解しながら学ぶことができました。工学と経済学、医学の関連について知ることができたり、最先端の研究、技術に触れることができて、たいへん刺激を受けました。義手や義足の持つ可能性、特に、人間の持つ力以上の力を発揮できるというお話が強く印象に残りました。(高2)

・ロボットに興味があったので参加しました。講演を聞く中で、将来性豊かな学問だなと感じましたし、講義の内容が、評論文などでしばしば取り上げられるロボットやAIに関するものだったので、そうした分野に関する知識を広げることができました。また、お話が、先生の研究内容だけでなく、大学での学問などに及ぶものだったので、文系理系に関係なく、すごくためになるものだと感じました。講演の内容ではありませんが、パワー・ポイントの内容で、英語が多く用いられていたことも強く印象に残りました。(高2)

・自分が将来進もうと考えている医療に関係した内容だったし、工学自体にも関心があったので参加しました。先生の研究に対する考え方、例えば、「美しさ」と「不気味」は紙一重といった話題など、新鮮かつ納得させられるもので、お話を聞けて良かったと思いました。(高1)

・自分は自然科学に興味があるのですが、機械工学にも関心があったので参加しました。今回の講義で、機械工学というものを、より知ることができ、以前より身近に感じられたことがとても良かったなと思っています。先生がおっしゃっていた中で、人はコミュニケーション能力によって進歩してきたということがとても印象に残っていて、自分の生き方を変えるような大事なことを学べたように感じます。自身の能力を高めながら、他人とのコミュニケーションを怠らないようにこれから生きていこうと思います。(高1)

・医療に興味があるのと、学校の先生に誘われたので参加しました。横井先生のお話はすごくおもしろく、中学生の僕にもわかりやすく、これまで大学とはどういった場所なのか、見当も付かなかったのですが、今日で、おおまかではあるけど、つかめたように思います。個人的には「他人の興味のないものを活用する」というお話が大変印象に残っています。(中3)

・テーマがおもしろそうだったので参加しました。大学での研究テーマにも、さまざまなことがあるとわかったのが良かったです。(中2)