大学で研究してみませんか JAXA相模原キャンパス はやぶさ2プロジェクト訪問
TOHO Today高校
進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。
今回はスペシャル版として、夏休み期間の7月31日(水)にJAXA相模原キャンパスを訪問しました。ご案内いただいたのは、小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャをなさっている桐朋高等学校48期卒業の津田雄一さんです。参加したのは、高校3年6名、高校2年18名、高校1年14名、中学3年14名、中学2年7名、中学1年14名の計73名で、このうち地学部員は33名です。
最初に津田雄一さんから見学の内容をご紹介いただき、地学部と地学部以外の2グループに分かれて、「はやぶさ2」に関する映像の鑑賞、キャンパス内にある展示施設、宇宙科学探査交流棟をご案内いただきました。
「宇宙科学探査交流棟の展示施設見学」では、ロケットなどの実物と模型を間近に見学しながら、担当の方からご説明いただきました。「はやぶさ」でイオンエンジンを採用したのは「燃費の良さと丈夫さ」であることや、
「はやぶさ」などを覆っている黄色(金色)の部分は断熱材であること、
今後のロケットは、打ち上げのスタイルを変更し、再利用できるものも作っていくことなどをお話しいただき、
宇宙から戻ってきた「はやぶさ」の再突入カプセルなどの実物も見学しました。
次に、はやぶさ2のプロジェクトに関する映像を見せていただきました。プロジェクトに取り組んでいる方々の様子が印象的に紹介され、その中でプロジェクトに懸ける思いがさまざまに語られていました。
その後、はやぶさ2プロジェクトマネージャを津田雄一さんにご講演いただきました。
JAXA全体では約1、500人、相模原にある宇宙科学研究所には約300人の職員の方がいらっしゃるそうです。津田さんは、宇宙飛翔工学研究系の准教授であり、「はやぶさ2」の設計、開発に携わるプロジェクトマネージャをなさっています。これまで津田さんが関わった探査機には、「はやぶさ」「小型ソーラー電力セイル実証機イカロス」などがあるそうです。
津田さんと宇宙との出会いについてもお話しいただきました。津田さんは、小学校低学年の頃、お父様に連れられ、ケネディ宇宙センターでロケットの実物を見学、高学年の頃には、ハレー彗星の接近に心を躍らせることなどで、宇宙への関心が高まり、ロケットや宇宙船を作りたいという夢を抱くようになったそうです。高校の頃にも、日本初の宇宙飛行士である秋山さんが誕生、NASAのボイジャーによる惑星探査が話題になる中で、航空宇宙工学を学ぼうと、東京大学に進学されました。その後、JAXAに就職、すぐに、はやぶさプロジェクトに配属になったそうです。
続いて、はやぶさ2プロジェクトについてご説明いただきました。
「はやぶさ2」は、2014年に打ち上げ、2018年6月に、「リュウグウ」に到着、2019年2月、7月にタッチダウン成功、2019年末に「リュウグウ」出発、1年後に地球に帰還する予定になっています。太陽系を取り巻く天体の中で、小惑星は2018年時点で約79万個発見されていて、そのうち名前のついているものは2万個あまりだそうです。
多くのロケットは片道のみの運行で、データなどを送ってくるのに対して、はやぶさ2プロジェクトは地球と天体を往復し、地球以外の天体から試料(サンプル)を採取し、持ち帰る(リターン)ことをします。これにより、天体のスケールから顕微鏡のスケールまですべてを調査でき、太陽系の起源や地球に生命が生まれたきっかけを知ることができるそうです。
「はやぶさ2」のプロジェクトでは、「はやぶさ」が探査した小惑星「イトカワ」と別の種類の小惑星である「リュウグウ」を探査していますが、「はやぶさ2」が「リュウグウ」に近づくと、「リュウグウ」の表面は他の小惑星と比べてでこぼこで、タッチダウンしやすい平らでなだらかな場所がないことがわかったそうです。そのため、タッチダウンの時期を延期し、「リュウグウ」を深く知ることに力を注ぐとともに、「はやぶさ2」の実力についても再度検証を進めたそうです。その中で、元々は1辺100m四方のエリアへの着陸を想定していたのに、1辺6m四方のエリアでも着陸が可能であることを確認し、1度目のタッチダウンに成功。さらに、世界初のチャレンジである地下物質の採取に取り組む2度目のタッチダウンにも成功したそうです。津田さんは「究極の技術、科学、チームワークが必要とされる場。だから、探査の仕事はおもしろい」とお話しくださいました。
生徒からの質問として、「プロジェクトマネージャとしてリーダーシップを取る際、大切にしたことは?」「採取できて一番嬉しいものは何か?」「計画段階で大変だったことは何か?」「JAXAでは、本人が希望するプロジェクトに関わることはできるのか?」「はやぶさ」と「はやぶさ2」とで、現場の雰囲気に違いはあるか?」「航空宇宙工学の仕事に将来就くために、今勉強しておくことは何か?」などがあり、
「大きな労力と資金をかけて宇宙探査をする意義として、どんなことを考えているか?」という質問には、「今回の探査は、太陽系や生命の起源を探ることを目的として、40億年以上前の石のかけらを採取するもので、究極の最先端技術を使った究極の基礎科学と言える。基礎科学とは、実用性が意図されているとは限らないが、人間の叡智に繋がるものであり、ノーベル賞の多くも基礎科学に当たる。日本はこうした研究を行える環境にある。ぜひ、自分がおもしろいと思うものを見つけて取り組んでほしい」とお答えいただきました。
その後、参加した生徒を代表して、地学部主将から津田さんに、「はやぶさ2」の成功を祝した色紙が贈られました。
全体の会が終わったあとにも、津田さんは生徒からの個別の質問にお答えいただき、写真撮影などにも応じてくださいました。
参加した生徒の感想です。
・地学部ですので、元々関心がありましたし、桐朋祭で「はやぶさ2」の展示もしたので、ぜひとも参加しようと思いました。プロジェクトに関わる一人一人が、「はやぶさ2」にかける思いを強く持っていたことが、メンバー内でのコミュニケーションの充実につながり、その結果として今回の快挙があると感じました。貴重なお話、ありがとうございました。地球への帰還も含めた、はやぶさ2の成功、心からお祈りしています。(高2)
・津田さんが桐朋の卒業生だと知り、参加しようと思いました。国を挙げての大きなプロジェクトの様子を詳しく説明いただき、自分もその一端に触れることができ、貴重な体験になりました。これからも、はやぶさ2の旅は続くので、がんばってください。(高2)
・地学部でこの企画を知り、貴重な機会だし、自分の知識も増やせると思ったので、参加しました。津田さんから貴重なお話を聞き、貴重な物も見せていただけたので、思っていた以上に知識を増やすことができました。いやぁ、JAXAの方々は頭が良すぎです。はやぶさ2の成功、祈ってます。それと、部員に最後までサインを書いていただくなど、大変良くしていただきました。本当にありがとうございました。(高1)
・元々はやぶさのプロジェクトが好きで、JAXAにも興味があったので、参加しました。実際のJAXAの業務に接し、見学できたことで、具体的なイメージを持つことができました。子供の頃からの憧れであった、はやぶさのプロジェクトの一端に触れることができ、本当にうれしかったです。(高1)
・僕は天文、宇宙開発分野に以前から興味があり、将来JAXAをはじめとした宇宙開発を担当する企業や組織に就きたいと最近考え始めてもいました。実際にJAXAで開発に携わっている方々からお話を聞き、将来に向けての道しるべにしたいと思い、参加しました。興味を持っている分野について、実際のお話を聞き、見学もできて、貴重な体験になりましたし、何より将来への熱意が限りなく高まったように思います。また、想像していた以上に、外国の方々がたくさんJAXAのキャンパスに来ていて、国際会議が数多く行われているように感じました。宇宙開発のグローバル化、英語学習の大切さを実感しました。これから少しずつ知識や技能を身につけて、将来このような仕事に就けるよう、全力で頑張ります。(中3)
・以前から天文・宇宙開発分野に興味があって、はやぶさ2のプロジェクトにも興味があったので、参加しました。はやぶさ2やJAXAの施設のことを、プロジェクトマネージャである津田さんから直接話していただき、津田さんの学歴を知ることもできて、大変良かったです。これからも知識をたくさん身につけ、将来このような仕事に就けるよう、頑張ります。(中3)
・僕は地学部員で、ロケットやはやぶさ2についてとても興味があり、プロジェクトやJAXA内部の様子について詳しく知りたいと思い、参加しました。津田さんから、はやぶさ2を打ち上げてから2回目のタッチダウンをするまでの様子を詳しく教えていただき、とてもためになりました。内部の様子を実際に見学し、講演もしていただけたので、この仕事について具体的なイメージを持つことができました。正直、はやぶさ2についてあまり詳しくは知らなかったのですが、プロジェクトの内容やその中での現場の方々の苦労を詳しく知り、はやぶさ2以外のJAXAの活動についても興味を持ちました。(中2)
・地学部であり、天文に興味があったので、参加しました。JAXAの売店や食堂などの日常使うような場所に行けたこと、なかなか見学できないような内部の場所も見学できたこと、中1の僕でも理解できるくらい、わかりやすく説明してくれたこと、すべてが良く、すばらしい体験ができました。ありがとうございました。(中1)