78期高2修学旅行【F組】
Student’s Board高校
◆旅行前
我々F組の行程決めは困難を極めた。 「温泉に行きたい」「ホテルにお金をかけたい」「自由行動を多めにとりたい」と大枠が決まったはいいが、行く地方が決まらない。 東海地方と四国地方でクラスの票数が真っ二つに割れてしまったのだ。 日を置いて再度投票しても結果は変わらず。 僅差で行き先を決めてしまうのは嫌だ、と悩みに悩んだ結果、委員外から有志を募り、各地方をプレゼンテーションしてもらうことにした。 最終的には東海地方が30票近くを獲得し、名古屋、伊勢を経由して大阪を回るプランが完成した。 行く地方を決めるのに時間を費やしてしまったため、他のクラスのように創意工夫に富んだ行程にはならなかったが、クラスの大部分が納得できる行程が完成したと自負している。
◆一日目
集合時間は8時30分で新幹線の発車時刻は9時03分。 いずれも学年で最も遅い時刻であるにもかかわらず、当日の朝、我々修学旅行委員の心中は穏やかではなかった。 なぜなら、F組には遅刻の常習犯が複数名存在するからだ。 朝のHRで姿を見せたことのない彼らが間に合うとは到底思えなかったのである―しかし予想は裏切られた。 (多分F組史上初めて)全員が無事集合時間に間に合ったのだ。 まさに奇跡である。 何はともあれ、我々F組の旅は最高の形で幕を開けたのだ。
新幹線に揺られること一時間半、最初の目的地である名古屋駅に到着した。 駅前で解散し、各班自由行動を開始する。 ちょうどお昼時だったので私の班はとりあえず昼ご飯を食べることに。 食べ物が美味しいことで有名な名古屋だが、我々が選んだのは「きしめん」だった。 旅行前に名古屋出身の江坂先生から、JRの三番線にあるきしめん屋が美味しい、と聞いていたからである。 店は意外と空いていた。 なるほど確かにかき揚げが美味しい。 江坂先生本当にありがとうございました。
腹も膨れたところで向かったのは熱田神宮。 織田信長が桶狭間の戦いの前に勝利を祈願したことで有名な神宮である。 有村先生や他の班とも合流した。 神宮内は木に覆われているからかとても涼しく、時間の流れが遅いような気がした。
最後に向かったのは犬山城だ。 岐阜県との境にある城で、F組の中で訪れたのは私の班だけであった。 犬山駅の改札を出てしばらく歩くと、昔ながらの城下町が広がっていた。 人通りも多く、城に近づくにつれて賑わいが増していく。 お目当ての犬山城は長い坂を登った上にあった。 中に入り、恐ろしいほど勾配が急な階段を上っていくと、見晴らしの良い天守閣に出た。 眼下には雄大な木曾川が流れ、遠くには山々が連なっている。 絶景だった。
宿には集合時間ぎりぎりにたどり着いた。宿泊した名古屋クラウンホテルは、部屋は狭かったものの、綺麗で雰囲気の良い宿だった。他の班と再会し、話を聞いたところ、名古屋タワーに行った者、ひつまぶしを堪能した者と各々名古屋観光を満喫した模様だった。一方、大して調べもせずに
本能の導くままに行動した者たちもおり、彼らは休館日の清州城や名古屋港水族館を訪れ、外観のみを写真に収めてきたとのことであった。
◆二日目
(理由はわからないが)クラスの大半が眠い目をこすり迎えた二日目の朝は、味噌カツ弁当という衝撃の朝食で幕を開けた。食べきれない者が続出する中、荷物をまとめ、8時20分にバスは出発した。目的地は伊勢神宮。言わずと知れた日本屈指のパワースポットである。初日の新幹線内での盛り上がりはいったいどこへ、大勢が爆睡していた。
到着したのは10時過ぎだった。天候は曇り、ひんやりとした空気の中、まずは外宮へ。人通りの少なさからか、はたまた気温の低さからなのか、どこか厳かな空気が漂っていた。内宮につくころには人も増え、修学旅行生もちらほら目についた。おかげ横丁で食べ歩きをした後は昼食。名物の伊勢うどんは弾力がなく、今まで経験したことのない食感だった。
二日目の終わりに向かったのは鳥羽水族館だった。なぜ高校生が水族館に?わからない。筆者は実に6年ぶりの水族館であった。正直眠かったが、いざ入ってみるとこれがまた楽しい。個人的にはジュゴンとワニがかわいいと思った。2時間はあっという間に過ぎ、宿へと向かった。
二日目の宿は千の杜。「ホテルにお金をかけたい」というクラスの民意が反映された豪華なホテルだった。部屋は綺麗で、温泉は広い。テレビの画面も大きかった。ただし、夕食のハンバーグは冷たく、大変不評であった。
◆三日目
疲労が蓄積し始めるのがちょうどこの日、三日目である。睡眠時間をバスの中でしかとっていない人も多くいる中、散らかった部屋を片付けるのは大変だった。バスに乗り込み向かったのは大阪だった。
昼過ぎに到着した大阪は日差しが照り付け、うだるような暑さだった。まず向かったのは大阪城。クラス全員で天守閣を背景に集合写真を撮ることになっていた。ここにきて我々委員の心拍数は上がっていた。スポーツ大会時に作成したクラスTシャツを着て撮影することになっていたためだ。忘れずに持ってくるよう何度も注意喚起はしたが、前日に配られた漢文のプリントをなくすくらいだ、持ってきていない人がいるに決まっている
―ところが。再び奇跡が起きた。全員持ってきていたのだ。安心よりも驚きが勝った。無事全員Tシャツを身にまとい、集合写真を撮った。
大阪城の前で解散した後は班別行動。そのまま大阪城の中に入る班もあれば、下に降りて電車で移動する班もあった。私の班は、たこ焼きを食べるべく道頓堀へ出た。(余談だが、この日、大阪にA,C,D,F,Gの五組が集結していたため、あらゆるところで桐朋生を見かけた。)本場のたこ焼きは圧巻だった。外はカリカリ中はトロトロ、今まで冷凍のたこ焼きしか食べてこなかった筆者には衝撃の一品だった。班の中では上方落語に行こう、と決めていたのだが、次の一品お好み焼きを食べるのに時間がかかってしまったため、断念。
体力も尽きかけていたので大阪城最寄りの森ノ宮駅に戻り、スターバックスで一息ついた。あっという間に時間が過ぎるのを感じたひとときだった。
◆感想
まず、一委員として感じたのは、無事に旅行を終えられて良かったということだ。コロナウイルスが蔓延する中で旅行に行けたこと自体が幸運だったし、自由行動の多い行程で何事も起きなかったことは本当に奇跡に等しい。旅行を運営するものとして、使命を全うできたという安心はとても大きかった。また、一個人としては、本当に充実した五日間だった。高校二年の学校生活はマスクをつけた状態での登校が続き、静かな人が多いというクラスの特色も相俟って、なかなかクラスメイトと距離が縮まらないな、というのが率直な感想だった。しかしこの修学旅行で五日間寝食を共にしたことで、クラスメイトの新たな一面が見つかり、個々人の関係であったり、クラス全体としての結束であったりが深まったように思われる。旅行中ももちろん楽しい時間ではあったが、何より旅行後に再び顔を合わせた時にした思い出話や、皆が楽しかった記憶に浸り浮かれている、そんな空気がクラス内に充満していたことがとても嬉しかった。
最後に、何も起こらないよう気を配り、クラスを先導してくださった担任の有村先生、副担任の金田先生、近畿ツーリストの方々、準備段階で大変お世話になった外堀先生、文教印刷さん、我々委員の話を真剣に聞いて積極的に話し合いに参加してくれたF組の皆、この旅行が形になるように尽力してくださった方々にこの場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。 78期修学旅行委員 S.T.