校長からのメッセージ
時代を拓く「自律的な学習者」に 校長 原口 大助
本校は、2021年に創立80周年を迎えました。卒業生は2万4千人を超え、さまざまな場で、新たな時代を切り拓く活躍をしています。教育において、一貫して大切にしてきたのは、探究心をもって学問に励む中で、自主・自立の精神を身につけ、互いの個性を尊重し、協働する姿勢を育むことです。
「『先行き不透明』『未曾有の国難』、こうした言葉は身の回りにあふれ、もはやありふれたものとなってしまっています。そうした危機が叫ばれる一方、救世主を受動的に待望する風潮があるようにも思えます。
しかし、先が見えないのは現代だけでしょうか? 歴史上全ての時代で、今我々が習う筋書きの如く事が進むと、誰もが見通せていたのでしょうか?」
(2012年3月 桐朋高等学校卒業式での答辞から)
解決への道筋の見出しにくい課題が山積する現在、私は10年ほど前に卒業生が述べた、この言葉を思い出します。彼は続けて、尊敬できる仲間と切磋琢磨した体験を語り、周囲と力を合わせながら主体的に取り組むことの意義を経験した「桐朋での学び」を活かし、卒業生一人ひとりが「時代を動かす一因子」となり得ると述べました。
従来の常識が通用せず、閉塞感に苛まれる状況を切り拓く上で、真に必要となるのは、自らの意志で学び続ける姿勢です。現在取り組んでいる教育課程では、これまで以上に「自律的な学習者」の育成を強く意識し、指導してまいります。
哲学者の鷲田清一氏は、教育の勘所として、「そこにいれば子どもが勝手に育つような場所をきちんと用意しておくこと」を挙げています。授業をはじめ、生徒への働きかけにいっそうの工夫を凝らし、さまざまな仕掛けを施すことで、桐朋という環境のさらなる充実に力を注ぎ、「自律的な学習者」へと導いてまいります。
校長 原口 大助